日本で、家庭用ペレットボイラの導入台数が極めて少ないのは、次の問題があるからだと考えています。
1.導入費用が高い(同じ6kWだと、灯油ボイラ20万、ペレットボイラ200万)
2.燃料費が高い(ペレットは発熱量単価でこれまで灯油より割高でした)
3.用途が合わない(欧州:セントラルヒーティング、日本:給湯メイン)
4.サイズが大きい(ボイラ、燃料タンク、貯湯槽/蓄熱槽の専有面積が大きい)
新築住宅において、高額なペレットボイラを入れるくらいならば、システムキッチンのグレードをアップさせるとか、車を新しいものに買い替える費用に充てるとか、そんな場所があれば駐車場にするとか、いずれにしてもニーズがないのです。
しかも、日本の新築住宅は電化一辺倒。
なんでもかんでも電気で動いています。
そして、免罪符なのか、あるいはちょっとした贅沢なのか、薪ストーブが唯一の環境オプション。
また脱線しました。
この、ポスト・コロナ政策としてのグリーン・リカバリーが2020~2022年に至るストーブやボイラ需要の背景にあることを理解してください。
次に、世界のペレット需要(発電と熱の総需要)。
こちらも右肩上がり、2013年から9%の成長率。

もちろん、欧州の熱需要が牽引していますが、近年伸びているアジアは日本が発電用に大量に輸入して燃やして、2割を電気、8割を廃棄(大気や海水を暖める)に変えているFITの影響です。
この日本の、非常に問題の大きなFIT制度の話は別の機会に論じるとして、これらの需要を更に細かく見ると、次のような内容となります。

このグラフによると、2021年の全世界のペレット需要量は4,500万トンだったそうです。日本国内の生産量が10万トン以下(おそらく実際には5万トンちょっと)ですから、如何に世界の需要が大きいかがわかります。
注目は、そのうち最も大きな割合を占める37%、量にして1,665万トンはEU域内の家庭用または業務用の熱利用に用いられたという点です。木質ペレットの理想的な利用法として消費されたのは、たったの37%ともいえます。
Drax(イギリス)、Orsted(デンマーク)、Lynemouth(イギリス)、RWE(ドイツ)、Engie(フランス)、Uniper(ドイツ)は全て欧州の電力会社。これらの合計が34%、1,530万トン。欧州での熱利用と匹敵する量だということがわかります。
※ROW heat:Rest of the world heat(欧州の熱利用を除く世界の他の熱利用)
日本も載ってますよ。日本の国産ペレットは5万トン少々だと書きましたが、発電のための輸入量は膨大で、世界需要の5%に相当する225万トン。純輸入国です。しかも発電用!
韓国は独立系の電力事業者(IPPs: Independent Power Producers)と国有電力事業者(GENCOs: State-owned Power Generation Companies)に分かれていますが、いずれも、日本のRPSと同様の制度(FIT前の制度)によってバイオマス発電を行っています。その合計は世界需要の9%、405万トン。韓国も日本と同様、国産ペレットの生産量は僅かですから、純輸入国、しかも発電用。
この二か国は世界でも特異なお国柄で、発電用のみにペレットを大量消費、急に生まれた極東アジアの巨大需要。
残るSwedish IndustrialとOther Industrialについても、Industrialというのは発電用という意味ですから、全ての発電用を合計すると、世界需要の55%は発電用ということになります。
数年前までは、それでも世界需要の半数以上は熱利用と言われていたように思いますから、今や、熱利用と発電が逆転したということですね。
その発電用のペレット価格は2021年の1月以降、高騰しています。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響です。
EU+UKのペレット輸入、1,280万トンのうち、26%に相当する量がロシアやベラルーシ、ウクライナといったウクライナ危機の直接的な影響を受けている国からのものになります。

私が今年4月にオーストリアのWelsで開催された「European Pellet Conference」にオンラインで参加して日本の状況を説明した際にも、ウクライナ危機はパネルディスカッションのテーマの一つでしたが、その際に語られていたのは、ロシアのペレット生産は世界の生産量の6%に過ぎない、というもので、楽観的な意見が多かったように思います。
ところがどっこい、影響は甚大、というのが今回の内容。
というのも、ロシアの生産量は6%だとしても、ベラルーシやウクライナからの供給を含めるとインパクトは増大します。また、ロシア産の木材の輸出が禁輸になったことで、欧州の製材所はペレットの原料となる製材副産物(オガ粉や鉋屑)を生産できず、ペレットの生産量が減っています。
そうなってくると、これまでペレットの輸出国だった国でも輸出に回す分が減ってきます。
加えて、ここが重要なところですが、グリーン・リカバリー政策でペレットストーブやボイラが増加したので、ペレットの熱利用の需要が広がりました。
結果、家庭用ペレットの価格が高騰し、オーストリアでは、2019年比で3倍になりました。

日本でも家庭用ペレットの価格はこの春に少し上がりましたが、10%程度でした。これまで欧州の人は日本のペレット価格(50円/kg)を聞いて、高すぎると言っていましたが、以前35円/kg程度だった彼らも、今や100円/kgを超えており、日本の方が半額じゃないかという状況。
高騰だけならまだしも、例えばイタリアのような、ペレットストーブでペレットを大量に消費していて、かつ純輸入国となると、既にペレットが手に入りません。
講師のシュタットローバーさんはペレットの流通会社なので、お客に届けるペレットが手配できない状況を見越して、現在、ニュージーランドから月1,000トン規模でペレットをコンテナで輸入し始めました。コスト的に合わなくても、ショーテージを起こすわけにはいかないからです。
オーストリアは電力のバックアップ電源が天然ガス(おそらくガスタービン)なので、正直なところ、この冬にブラックアウトがあるのではないかと言っていました。電源が止まると、全ての機器が停止するということで、欧州では薪ストーブが飛ぶように売れています。
また、産業界はガスが手に入らないので、今、油ボイラが売れまくっており、その結果、油も手に入らなくなりつつあるということでした。
ちなみに、欧州のガソリン価格は200円/Lを超えています。
日本はガソリンへの政府の補助などがあってこの辺の問題は国民には理解できていないかもしれませんが、欧州における油やガスの問題、ペレット不足の問題、この辺もきちんと報道していただきたいものです。
この冬が暖冬だと良いのですが、記録的な寒波となると、ドイツ辺りはロシアへの制裁を緩めざるを得ないかもしれません。そのような時代になったことに驚くとともに、一個人の判断で世界のエネルギー事情が大きく暗転することが残念です。
日本はFIT用に大量のペレットを輸入していますが、これらも記録的な円安によって発電事業者は経済的なメリットを減らしています。
国産ペレットは今や国際的には安価な暖房用燃料になりつつあるので、きちんと振興策を用意して、欧州のグリーン・リカバリー政策のような市場を作っていただきたいものです。
そろそろ政治的なアクションが必要です。




コメント
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コロナやウクライナ侵攻で欧州のペレット業界がどうなっていたのか気になっていました。
ペレットボイラへの補助率75%って凄いですね。
ストーブはフランスがずっと右肩上がりでイタリア超えてますね。ボイラーも多い。
ドイツはボイラー一番多いですがストーブは少ないですね。
(あとストーブの7万5千台増は2021年と2022年の比ではなく、2020年と2021年の比ですね)
記事を読んでコメントまでいただいてありがとうございます。
早速、ご指摘いただいた2ヵ所の間違い(ストーブとボイラの販売年)を修正しました。
あと、GernotさんからROW heat(Rest of the world heat)の意味を教えてもらったので、それも追加しました。欧州以外の地域の熱利用で片付けられてしまった量が世界需要のたったの8%ということで、如何に熱利用が少ないかを示しています。
日本の発電利用が世界需要の5%なのですから、まさに本末転倒。