前回のメールニュースで連絡した通り、2022年9月12日に長野県の伊那市役所の多目的ホールをお借りして、交流会「オーストリアのペレット流通」を開催しました。
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当日は、直前の通知にも関わらず20名程度の参加者にお越しいただき、また、伊那市には会場を提供いただき、長野県や業界紙「オンサイト・レポート」、業界団体「日本ペレットストーブ工業会」には広報等のご協力を賜りました。あらためて、御礼申し上げます。
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今回の発表では、講師であるシュタットローバーさんのペレット流通事業の説明の前に、欧州におけるペレット流通の現状を説明していただきました。

内容は非常に新鮮で、私自身、大変勉強になりました。
以下、概要をお伝えしたいと思います。

まず、理解しなければならないのは、コロナ禍における欧州のグリーン・リカバリー政策です。

これは2020年5月に決定されたEUの政策ですが、日本では「ポスト・コロナの成長産業として、欧州議会が再生可能エネルギーに集中的に投資を行うことを決めた」という程度でしか報道されていません。

これは米国における電気自動車の普及政策に対する日本の報道(先日、デトロイトのモーターショウでバイデンさんが発表しています)でも同じような傾向がみられますが、政府による投資とは何を意味するか、考えたことはありますか?

それはズバリ「補助金」です(米国の場合は税控除)。

欧州では、コロナ禍の中、再生可能エネルギー、我々の分野では、バイオマスの熱利用(決して発電はでありませんよ)に対して多額の補助金が支払われるようになりました。

欧州のそれが日本と大きく違うのは、補助金の受け手が個人であること。

日本では、残念ながら個人がストーブやボイラを買おうとしても国の補助は得られません。薪ストーブやペレットストーブのみ、一部の自治体が独自に補助金を出しており、それらの最新情報は当会のウェブで確認できます。

ペレットクラブ バイオマス設備等導入補助情報

不思議なことに自動車(エコカーと言われる)に対しては、個人が補助金を得られます。これは米国でも同じ。日本でも自動車以外には家電などでも高効率のエアコンには国の補助が出ていて、個人が対象です。

つまるところ、日本のバイオマス熱産業は力が弱すぎてロビー活動ができていないから個人は対象外、ということなのですが、成長前なんだから力がなくて当たり前ではないでしょうか。戦後すぐに発展した他の産業とはベースが違うので。

それはそうと、コロナ以前は最大でも25~30%程度であった欧州の家庭用ボイラへの補助金が、グリーン・リカバリー政策によって、75%以上の補助率に代わりました。

例えば家庭用の6kW程度のペレットボイラですと、凡その導入コスト(機器のみ)が200万円くらいします。コロナ前は補助金が50万くらい、残り150万を個人が負担していたわけです。それが、コロナになって補助金が増額され、補助金が150万、個人の負担は50万へと逆転しました。

50万で最新のボイラが購入できて、しかも燃料は化石燃料より安いとなれば、売れない訳がありません。

これがグリーン・リカバリー政策の実態であり効果なのです。
ガソリンにせっせと補助しているどこぞの国とは方向性やお金の使い道が違います。

今度は電気代の補助を出すとか、言ってますね。
当然、日本のこういった政策は産業振興やグリーン産業の発展につながりません。

もとい、欧州でボイラへの補助率が増加したことは、コロナ禍が始まってボイラの輸入の際に納期が長くなり始めて気がついていましたが、今回、具体的な数字として理解することができました。

こうして、ストーブと家庭用ボイラの需要が急増しました。

これはペレットストーブの販売増加を示しています。
年率20%の伸びで、2021年は40万台以上が販売されたそうです。
2020年と2021年の比では75,000台の増加。
Stove sales 2021

ちなみに日本では年3,000台くらいが販売台数ですから、100倍以上の差があります。

表に小さく書かれていますが、40万台のストーブは100万トンの燃料需要につながる(2.5トン/台)そうです。日本だと1台で1トンくらいの消費だから、欧州のストーブは日本の2.5倍稼働しているということですね。

驚くのは家庭用ペレットボイラの方です。
2020年と2021年を比べると、72,000台の販売増加、率にして78%の増加!
合計17万台の家庭用ペレットボイラが販売されました。
燃料需要も34万~102万トンほどの増加になるそうです。
2~6トン/台という計算になります。
これも面白い情報です。
Boiler sales 2021

日本だと、どうでしょう。
家庭用のペレットボイラって、何台売れています?

私が知る限り、これまでで『たった数台!』です。
片手以上、両手未満じゃないでしょうか。

一方、家庭用の薪ボイラは日本でも人気があって、年間数台から数十台は売れていそうですが、家庭用のペレットボイラって、そもそも販売実績をもっている代理店がほとんどないと思います。


日本で、家庭用ペレットボイラの導入台数が極めて少ないのは、次の問題があるからだと考えています。


1.導入費用が高い(同じ6kWだと、灯油ボイラ20万、ペレットボイラ200万)

2.燃料費が高い(ペレットは発熱量単価でこれまで灯油より割高でした)

3.用途が合わない(欧州:セントラルヒーティング、日本:給湯メイン)

4.サイズが大きい(ボイラ、燃料タンク、貯湯槽/蓄熱槽の専有面積が大きい)


新築住宅において、高額なペレットボイラを入れるくらいならば、システムキッチンのグレードをアップさせるとか、車を新しいものに買い替える費用に充てるとか、そんな場所があれば駐車場にするとか、いずれにしてもニーズがないのです。


しかも、日本の新築住宅は電化一辺倒。

なんでもかんでも電気で動いています。


そして、免罪符なのか、あるいはちょっとした贅沢なのか、薪ストーブが唯一の環境オプション。


また脱線しました。


この、ポスト・コロナ政策としてのグリーン・リカバリーが2020~2022年に至るストーブやボイラ需要の背景にあることを理解してください。


次に、世界のペレット需要(発電と熱の総需要)。

こちらも右肩上がり、2013年から9%の成長率。

World pellet demand 2021
もちろん、欧州の熱需要が牽引していますが、近年伸びているアジアは日本が発電用に大量に輸入して燃やして、2割を電気、8割を廃棄(大気や海水を暖める)に変えているFITの影響です。


この日本の、非常に問題の大きなFIT制度の話は別の機会に論じるとして、これらの需要を更に細かく見ると、次のような内容となります。

Global pellet demand 2021
このグラフによると、2021年の全世界のペレット需要量は4,500万トンだったそうです。日本国内の生産量が10万トン以下(おそらく実際には5万トンちょっと)ですから、如何に世界の需要が大きいかがわかります。


注目は、そのうち最も大きな割合を占める37%、量にして1,665万トンはEU域内の家庭用または業務用の熱利用に用いられたという点です。木質ペレットの理想的な利用法として消費されたのは、たったの37%ともいえます。


Drax(イギリス)、Orsted(デンマーク)、Lynemouth(イギリス)、RWE(ドイツ)、Engie(フランス)、Uniper(ドイツ)は全て欧州の電力会社。これらの合計が34%、1,530万トン。欧州での熱利用と匹敵する量だということがわかります。


※ROW heat:Rest of the world heat(欧州の熱利用を除く世界の他の熱利用)


日本も載ってますよ。日本の国産ペレットは5万トン少々だと書きましたが、発電のための輸入量は膨大で、世界需要の5%に相当する225万トン。純輸入国です。しかも発電用!


韓国は独立系の電力事業者(IPPs: Independent Power Producers)と国有電力事業者(GENCOs: State-owned Power Generation Companies)に分かれていますが、いずれも、日本のRPSと同様の制度(FIT前の制度)によってバイオマス発電を行っています。その合計は世界需要の9%、405万トン。韓国も日本と同様、国産ペレットの生産量は僅かですから、純輸入国、しかも発電用。


この二か国は世界でも特異なお国柄で、発電用のみにペレットを大量消費、急に生まれた極東アジアの巨大需要。


残るSwedish IndustrialとOther Industrialについても、Industrialというのは発電用という意味ですから、全ての発電用を合計すると、世界需要の55%は発電用ということになります。


数年前までは、それでも世界需要の半数以上は熱利用と言われていたように思いますから、今や、熱利用と発電が逆転したということですね。


その発電用のペレット価格は2021年の1月以降、高騰しています。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響です。


EU+UKのペレット輸入、1,280万トンのうち、26%に相当する量がロシアやベラルーシ、ウクライナといったウクライナ危機の直接的な影響を受けている国からのものになります。

War impact
私が今年4月にオーストリアのWelsで開催された「European Pellet Conference」にオンラインで参加して日本の状況を説明した際にも、ウクライナ危機はパネルディスカッションのテーマの一つでしたが、その際に語られていたのは、ロシアのペレット生産は世界の生産量の6%に過ぎない、というもので、楽観的な意見が多かったように思います。


ところがどっこい、影響は甚大、というのが今回の内容。


というのも、ロシアの生産量は6%だとしても、ベラルーシやウクライナからの供給を含めるとインパクトは増大します。また、ロシア産の木材の輸出が禁輸になったことで、欧州の製材所はペレットの原料となる製材副産物(オガ粉や鉋屑)を生産できず、ペレットの生産量が減っています。


そうなってくると、これまでペレットの輸出国だった国でも輸出に回す分が減ってきます。


加えて、ここが重要なところですが、グリーン・リカバリー政策でペレットストーブやボイラが増加したので、ペレットの熱利用の需要が広がりました。


結果、家庭用ペレットの価格が高騰し、オーストリアでは、2019年比で3倍になりました。

Price index heating pellet
日本でも家庭用ペレットの価格はこの春に少し上がりましたが、10%程度でした。これまで欧州の人は日本のペレット価格(50円/kg)を聞いて、高すぎると言っていましたが、以前35円/kg程度だった彼らも、今や100円/kgを超えており、日本の方が半額じゃないかという状況。


高騰だけならまだしも、例えばイタリアのような、ペレットストーブでペレットを大量に消費していて、かつ純輸入国となると、既にペレットが手に入りません。


講師のシュタットローバーさんはペレットの流通会社なので、お客に届けるペレットが手配できない状況を見越して、現在、ニュージーランドから月1,000トン規模でペレットをコンテナで輸入し始めました。コスト的に合わなくても、ショーテージを起こすわけにはいかないからです。


オーストリアは電力のバックアップ電源が天然ガス(おそらくガスタービン)なので、正直なところ、この冬にブラックアウトがあるのではないかと言っていました。電源が止まると、全ての機器が停止するということで、欧州では薪ストーブが飛ぶように売れています。


また、産業界はガスが手に入らないので、今、油ボイラが売れまくっており、その結果、油も手に入らなくなりつつあるということでした。


ちなみに、欧州のガソリン価格は200円/Lを超えています。


日本はガソリンへの政府の補助などがあってこの辺の問題は国民には理解できていないかもしれませんが、欧州における油やガスの問題、ペレット不足の問題、この辺もきちんと報道していただきたいものです。


この冬が暖冬だと良いのですが、記録的な寒波となると、ドイツ辺りはロシアへの制裁を緩めざるを得ないかもしれません。そのような時代になったことに驚くとともに、一個人の判断で世界のエネルギー事情が大きく暗転することが残念です。


日本はFIT用に大量のペレットを輸入していますが、これらも記録的な円安によって発電事業者は経済的なメリットを減らしています。


国産ペレットは今や国際的には安価な暖房用燃料になりつつあるので、きちんと振興策を用意して、欧州のグリーン・リカバリー政策のような市場を作っていただきたいものです。


そろそろ政治的なアクションが必要です。