この4月に義務化されるとされてきた省エネ基準について、2025年度から施行ということは既に義務化されているはずなのですが、前回、2020年に義務化を見送った時のような反発も、世間の反応もあまりないように思います。
不思議ですね。
あれほど反発した建築関係の業界団体はどうしちゃったのでしょう。
ディールも一回きり、ということ?
住宅業界はコロナ後のウッドショックや物価高騰で住宅価格が急上昇していて、新築の戸建て住宅なんて、コロナ前の1.5倍くらいの価格になっています。加えて省エネ基準に適合していないと確認申請が通らないとなると、さてお商売としてはどうなんだろうと思いますが、省エネのベースがもともと緩いから、普通に機器を選択したら問題なくクリアできるのですかね?
だったら、5年前はなんであんなに大騒ぎしたんだ?
というのも、ペレットクラブでは、2014年12月3日に開催された国交省の「住宅省エネシステム検討委員会②設備込基準検討WG暖冷房・換気設備SWG木質燃料ストーブTG」に参加して以降、ペレットストーブを省エネ機器として評価してもらうため、2019年度まで活動した経緯があります。
その際は、2019年の年末になって突如、国交省が「義務化を見送る」と発表し、5年間にわたる努力が水泡に帰しました。
この間の経緯は、JWBA(日本木質バイオマスエネルギー協会)がPSJ(日本ペレットストーブ工業会)に依頼した調査報告書に詳しく書かれているので、参照ください。
8.1. 木質バイオマス(ペレット・薪)ストーブ規格化の概要
別紙1 日本ペレットストーブ工業会による委託報告書
別紙1 日本ペレットストーブ工業会による委託報告書
そのPSJですが、当初はペレットクラブの部会として活動していたのですが、省エネ基準の義務化を見据えると、業界団体として成立したほうが良いという議論のもと、2015年7月31日に任意団体として発足しました。その後、2022年11月1日に法人化(一般社団法人)されています。
今回の省エネ基準義務化においてはこのPSJがペレットストーブの評価を受けるための活動をされてきました。
その結果として、国交省の「住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム」(通称Webプログラム)の「暖房」では既にペレットストーブは選択が可能になりました(薪は現状選択不可)。
これは非常に大きな成果だと思います。
ある意味、ペレットストーブが暖房機器として政府に正式に認められた訳ですから。
業界として、もっと歓迎して、宣伝すべきだとも思います。
ペレットクラブは、前回、2020年の義務化の際には、ペレットストーブの評価を受ける段階までは駒を進めたものの、最終的にWebプログラムに登録されるまでは到達できなかったことから、PSJや関係者の努力に敬意を表したいとも思います。
とはいえ、この間、我々も何もしてこなかった訳ではなく、ペレットクラブではPSJからの依頼を受ける形で、国内でペレットストーブを製造または輸入している企業から、省エネ法に関係する性能試験(CO値、排ガス温度、熱効率、暖房出力)と併せて、消防法に関係する離隔距離試験を受託し、上越環境科学センターと共同でこれらの試験を実施してきました。
昨年度の試験結果は既にPSJのホームページに「ペレットストーブの性能一覧表」として掲載されており、これがないと、Webプロでも何もできません。我々としては、今後も順次、試験を実施しますので、情報が充実していくと思います。
ストーブの試験を実施している試験棟は、2014年に導入したものですが、10年経って老朽化してきたため、昨年度、塗装をやり直しました。
こちらが塗装前、ケレン作業後。
1)一次エネルギー換算係数
今回、ペレット燃料の一次エネルギー換算係数を「1」にする(つまり化石燃料と同じ)という結果になったそうです。
2019年までの議論では、ペレットや薪は化石燃料に対してCO2削減効果が見込めるため、係数0はないとしても、0.1とか0.2とか、その辺で良いのではということだったのですが、今回は「1」。
エネルギーの量としてはバイオマスも化石燃料も同じだから、という理屈のようですが、省エネ法はそのような法律ではないので、この恣意的な係数は問題です。またどこかの業界団体の意見なのでしょうか。
省エネ法自体は資源エネ庁のサイトに次のように記されています。
エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下「省エネ法」という。)は、一定規模以上の(原油換算で1,500kl/年以上のエネルギーを使用する)事業者に、エネルギーの使用状況等について定期的に報告いただき、省エネや非化石転換等に関する取組の見直しや計画の策定等を行っていただく法律です。
そもそもこの法律は、オイルショックを契機として1970年に制定されたもので、法律の尺度は今でも「原油換算」です。この基準が全ての話をおかしくしているのですが、法律を変えるべき立法府が体たらくな我が国では、根幹を変えることができず、以来55年、この不思議な原単位が使われ続けているという悲劇があります(実はイギリスも同じような原油換算を使ってますが)。
また、原油に代わるエネルギーを探そうということで「石油代替エネルギー」なる言葉が考案され、今の「再エネ」に繋がっています。省エネ法も改正を繰り返して今に至っており、非常に控えめではありますが、二酸化炭素の排出量にも少しだけ触れています。事業者は排出量を報告せよ、と。
つまり、そもそもの法律の主旨からすれば、ここでいう「省エネ性」というのは、エネルギー量を削減しつつ石油依存から脱却しましょうということで、本来は省エネと環境性がセットになっていなければならないのです。
「省エネ法」自体が「エネルギー消費量」だけを目的に作られた法律ではない以上、時代の要請も勘案すれば、係数「1」は受け入れられません。再エネも化石も省エネ法では同じ位置づけだなんて、COPの席で言えますか?
しかも、薪やペレットは国産燃料でもあるのですよ(もちろん輸入もあるとして)。
エネルギー安全保障上も大切なことなのです。
この係数は由々しき問題でして、ペレットストーブのみならず、ペレットボイラや薪ボイラ、チップボイラのZEH/ZEBにも直接的な影響があるほか、木質燃料の価値が不当に低く評価される既成事実を作ることにつながります。
おりしも、日本はISO/TC238 Solid Biofuels & Pyrogenic BiocarbonのPメンバーとして、昨年から活動を本格化している最中であり、この委員会の国内審議団体はJBSAに引き継がれるまでは農水省が国内審議団体だったのです。
役所的には、省エネ法は経産省、省エネ基準は国交省、木質燃料は農水省なのかもしれませんが、はっきりいって、とんでもないことになっています。
ガースーがレジェンド作りで発言したであろう「2050年ゼロカーボン宣言」なんて、無理。
2)ペレットストーブの規格化とJIS
国交省のWebプログラムの「暖房」は既にペレットストーブが選択可能なことは先に記しましたが、その評価の基準(規格)策定の経緯にも課題があります。
ペレットクラブが交渉を行っていた2020年までは、ペレットストーブの性能評価のための規格は業界の自主規格で良いということで、この点は当時の経産省(資源エネルギー庁)の担当者からも説明を受けて、ペレットクラブの自主規格(中身はEN規格と同じ)で進めていました。
ところが今回は、国交省から「JISでなければならない」と強硬な主張があったそうで、JIS原案となる業界の自主規格が制定されました。
平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)現行版
この中の第四章冷暖房設備の第十節にペレットストーブの規格があります。
第九節は薪ストーブですが、まだ規格が載っていない為、Webプログラムで選択できない、ということなのでしょう。
引用規格は「JFSA/PSJ-01:2024 家庭用木質バイオマス燃料燃焼機器の試験方法」となっており、PSJが日本暖炉薪ストーブ協会と共に、昨年12月に自主規格を制定したようです。
ペレットクラブが交渉を行っていた2020年までは、ペレットストーブの性能評価のための規格は業界の自主規格で良いということで、この点は当時の経産省(資源エネルギー庁)の担当者からも説明を受けて、ペレットクラブの自主規格(中身はEN規格と同じ)で進めていました。
ところが今回は、国交省から「JISでなければならない」と強硬な主張があったそうで、JIS原案となる業界の自主規格が制定されました。
平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)現行版
この中の第四章冷暖房設備の第十節にペレットストーブの規格があります。
第九節は薪ストーブですが、まだ規格が載っていない為、Webプログラムで選択できない、ということなのでしょう。
引用規格は「JFSA/PSJ-01:2024 家庭用木質バイオマス燃料燃焼機器の試験方法」となっており、PSJが日本暖炉薪ストーブ協会と共に、昨年12月に自主規格を制定したようです。
「ようです」というのは経緯が不明だからで、今回の規格化の関係者には時間的な余裕がなかったこともその理由の一つなのでしょうけれど、業界の関係者の多くが詳細を知らない中で自主規格の議論が進みました。
とはいえ、規格の「まえがき」には次のように書かれています。
とはいえ、規格の「まえがき」には次のように書かれています。
まえがきつまり、今年9月末を目途にJIS原案を作るそうです。
この規格は,一般社団法人日本暖炉ストーブ協会(JFSA)及び一般社団法人日本ペレットストーブ工業会(PSJ)が共同で制定した団体規格であり,基準作成 > WG が原案を作成し,JFSA/PSJ 共同委員会の審議を経て,両理事会で承認したものである。
なお、現在 2025 年 9 月末を目途に、本規格を基に日本産業規格「家庭用木質場バイオマス燃料燃焼機器の試験方法」原案の策定を進めており、日本産業標準調査会の審議を経て制定された際には改めて本規格の扱いに関しては周知させて頂く。
その際には利害関係者が委員としてきちんと呼ばれて議論がされるのでしょう。
ちなみに、ペレット燃料はJAS0030を引用しています。
このJAS規格は難産で、我々も日本木質ペレット協会(JPA)に協力する形で進めましたが、何年もかかってようやく発表できました。そして、その流れが現在のISO/TC238につながっています。
ペレットストーブのJIS化にあたっては、JASの時と同じような、正式な手続きを踏んでいただきたいと思います。
3)JIS原案とENとの関係
3)JIS原案とENとの関係
実はこの自主規格(JIS原案)はEN規格とほぼ同じなのですが、JISにはフリービューイングの問題があるため、ENをそのまま採用できない(著作権が問題となる)ので、ENに書かれた計算式と「ほぼ同じようになる」計算式が採用されています。
当該箇所は、ENがqa, qb, qrを100から引いているのに対して、自主規格(JIS原案)はl1~5を引いています。
qa 試験燃料中の発熱量当たり燃焼排ガスの中の熱損失(Qa)の比熱に
よる熱損失の割合(燃焼基準)%
qb 試験燃料の熱容量当たり燃焼排ガスの中の化学的熱損失(Qb)の潜
熱による熱損失の割合、(燃焼基準)%
qr 試験燃料の熱容量当たり格子を通過し残渣物中に残った可燃性構
成物質による熱損失(Qr)の残渣物中の可燃性構成物質による損失
の割合(燃焼基準) %
l1 試験燃料中の発熱量に対する燃えさし中の未燃炭素分による熱損失率 %
l2 試験燃料中の発熱量に対する乾き排ガスによる熱損失率 %
l3 試験燃料中の発熱量に対する蒸発潜熱による熱損失率 %
l4 試験燃料中の発熱量に対する不完全燃焼による熱損失率 %
l5 試験燃料中の発熱量に対する試験燃料中の水分の蒸発潜熱による熱損失率 %
関係者からは「結果はほぼ同じになる」と聞いていますが、完全に同じにはならない為、いわゆるガラパゴス規格として、非関税障壁になる可能性があります。
当該箇所は、ENがqa, qb, qrを100から引いているのに対して、自主規格(JIS原案)はl1~5を引いています。
qa 試験燃料中の発熱量当たり燃焼排ガスの中の熱損失(Qa)の比熱に
よる熱損失の割合(燃焼基準)%
qb 試験燃料の熱容量当たり燃焼排ガスの中の化学的熱損失(Qb)の潜
熱による熱損失の割合、(燃焼基準)%
qr 試験燃料の熱容量当たり格子を通過し残渣物中に残った可燃性構
成物質による熱損失(Qr)の残渣物中の可燃性構成物質による損失
の割合(燃焼基準) %
l1 試験燃料中の発熱量に対する燃えさし中の未燃炭素分による熱損失率 %
l2 試験燃料中の発熱量に対する乾き排ガスによる熱損失率 %
l3 試験燃料中の発熱量に対する蒸発潜熱による熱損失率 %
l4 試験燃料中の発熱量に対する不完全燃焼による熱損失率 %
l5 試験燃料中の発熱量に対する試験燃料中の水分の蒸発潜熱による熱損失率 %
関係者からは「結果はほぼ同じになる」と聞いていますが、完全に同じにはならない為、いわゆるガラパゴス規格として、非関税障壁になる可能性があります。
4)輸入品の試験
仮に自主規格(JIS原案)がEN規格と「ほぼ同じ」だとしても、計算式が違うため、省エネ基準のWebプログラムで評価を受けようとすると、輸入品のペレットストーブもあらためて、自主規格(JIS原案)で試験を行う必要があります。
ペレットクラブでの試験も、2014年以降、保有するストーブ試験棟を用いて、上越環境科学センターに依頼する形で実施していますが、これまでのところ、引用規格は全てENです。
ペレットクラブでの試験も、2014年以降、保有するストーブ試験棟を用いて、上越環境科学センターに依頼する形で実施していますが、これまでのところ、引用規格は全てENです。
これが本年9月以降、JISでということになると、その前に、ENとの整合性について議論する必要がある他、輸入品に対する非関税障壁にならないよう、配慮する必要があります。
先に引用したJWBAの報告書でPSJが記している通り、日本ではペレットストーブの販売数が年間2~3,000台であるのに対して、イタリアは13万台、フランスで16万台が販売されています。合計でいくと100倍以上の市場規模がある欧州に対して、果たして日本のお家事情が通じるかどうか、極めて疑問だと言わざるをえません。
我々は現在、ISO/TC238で日夜、苦労している(中央ヨーロッパ時間だとISOのウェブ会議は日本の夜中なので)わけですが、そういった「国際化」の流れに反するような結果になることだけは、避けなければと強く思います。
さて、最後になりましたが、最初に書いた通り、省エネ基準の省エネ機器としてペレットストーブが評価を受けられるようになったことは、PSJや関係者の努力の結果だと思いますし、大きな成果だと思います。
先に引用したJWBAの報告書でPSJが記している通り、日本ではペレットストーブの販売数が年間2~3,000台であるのに対して、イタリアは13万台、フランスで16万台が販売されています。合計でいくと100倍以上の市場規模がある欧州に対して、果たして日本のお家事情が通じるかどうか、極めて疑問だと言わざるをえません。
我々は現在、ISO/TC238で日夜、苦労している(中央ヨーロッパ時間だとISOのウェブ会議は日本の夜中なので)わけですが、そういった「国際化」の流れに反するような結果になることだけは、避けなければと強く思います。
さて、最後になりましたが、最初に書いた通り、省エネ基準の省エネ機器としてペレットストーブが評価を受けられるようになったことは、PSJや関係者の努力の結果だと思いますし、大きな成果だと思います。
一方、そのための双子の鬼っ子(バイオマス燃料の一次エネルギー換算係数とJISストーブ規格)が産まれてしまうことだけは、回避する必要があると思います。
当団体のみならず、日本木質ペレット協会や日本バイオマスボイラ工業会、また、ペレットストーブ工業会、その他、輸入ストーブの関係団体なども巻き込みながら、これらの課題を克服していきたいと思う次第です。





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